[書評] 嫌われる勇気 承認欲求に取り憑かれがちな「今」読みたい人生の指標。

「生まれ変われるとしたなら、いつの自分に戻りたいか?」
こういった話題をテーマに多くの方がブログなりSNSに投稿されているのを見かけます。いじめられて心が深く傷ついた中学生時代をやり直したい、配偶者の本性を見極められなかったので独身時代に戻りたい、全く勉強せずに良い学歴を積めず貧乏なので子供の頃に戻りたい、子供の教育をもう一度やり直したい…みたいな。

この問に対して私はどうか?ですが「過去には戻りたくないな~」です。と言いますのも、私の人生はそこそこ思い通りになっているからです。
おおっと、誤解しないでくださいね。私は別に金持ちでも高学歴でもなく、誰も振り返るようなイケメン時代があった訳でもない、つまりは特別な何かでは全くもってありません。それでも人生が概ね思い通りになっている~という表現をしたのは、人生の中で行ってきた数多くの選択の結果こそが現状の自分を形成しているのだと思っているからです。

嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え

これまでには大小さまざまな数えられない程の選択ミスもしてきましたが、それは生まれ変わったとしても自分が変わらない限りはきっと同じような選択をし続け、結局は今と大差ない人生に落ち着くんじゃないかな?みたいな。それに、この選択をしなければ今の交友関係はない訳ですしね。

では「今は幸せ?」と聞かれれば、幸せですと回答できますが、それでも自覚している課題を克服し、よりシアワセを追求してみたい気持ちはあります。
例えば私はどうにも人の目を気にしてしまうのを窮屈に感じていたので、人から嫌われても動じないメンタル、つまりは嫌われる勇気を持ちたい!そんな思いで予備知識なく手にとって本書ですが、その内容は全く異なるものでした。もちろん良い意味で。

世界的には心理学界の巨匠とされながら、日本国内では無名に近い存在のアルフレッド・アドラーの教えは、一般人にとっては読み解き難いものだと思われます。
そこで本書ではアドラーの教えを説く哲学者と青年の会話形式で、その思想が解き明かされる仕組みになっています。

哲人:世界はシンプルで、人生もまたシンプルなんやで。
若者:複雑な人間関係に絡まれて生きるこの現実がシンプルな訳ないやろ!
みたいな。

嫌われる勇気

読み手である私の疑問を青年が明確に言語化して哲人にぶつけて疑問を解消してくれるかのような進行は、まるで私と青年の思考がリンクしているかのような錯覚を覚えます。このやりとりがドラマを見ているかのように映像が浮かびますが、何しろ自分の現状にあてはめて考えさせられる事が多いので 読むのに一週間くらいを費やしました。

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、それを改善するためのアドラー心理学の考え方がちりばめられています。強く印象に残ったくだりは沢山ありますが、なかなかに衝撃的だったのが過去の事実が今に与える影響を与えるという原因論を否定し、事実への意味付けが今に影響を与えるという目的論の提示です。

例:
原因論 … 過去の不安に原因があり、部屋に引きこもっている。
目的論 … 外に出たくないという目的を叶えるため、不安という感情を作り出した。

また、対人関係改善の入り口は課題の分離であるという考え方は、多くのビジネスマンにも参考になるのではないかと思います。
そして人生を歩んでいると色々な人と関わりが出来ます。
例えば自分の短所ばかり列挙する人、自慢話ばかりする人、不幸自慢する人、仕事をしないニート…等、そういった人たちの問題点の本質が見えたようで参考にもなりました。


中田敦彦のYouTube大学 – NAKATA UNIVERSITY

承認欲求に取り憑かれがちなこの時代ではありますが、他者からの評価やイイネの数ばかりを気にするのは他者の期待を満たすための生き方。我々は他者の期待など満たす必要はない…これだけでもSNS社会をシンプルに生き抜く教訓になるんじゃないかな?

本書「嫌われる勇気」では結局のところゴールをどこに設定しているのか?そして幸せとは何ぞや?という部分も明確に書かれています。嫌われる勇気…そう、勇気さえあれば今すぐにでも変われる!と書いてしまうと怪しい本のように見えてしまうかも知れませんが、幸福とは何か?という人生最大のテーマを考えることができるベストセラー本です。

私ももっとこの本と早くに出会えていたら~とも思いましたが、今だからこそ心に刺さったのだろうなと理解することにしています。皆様にも是非、読んで頂きたいです。
また、一度読んだだけでは理解が追い付かない部分もあるので、読み終えたこの本はメルカリに売らずに数年ごとに読み返そうと思います。

嫌われる勇気 お取り寄せ・購入先情報

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